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 ↑ロッキー田中のエッセイ「ときめきの富士を求めて」はこちらから
ご覧いただけます。

湖映雪姿

冬の湖面からいのちが立ち上がる。

  2月 河口湖円形劇場の浜より

 平地から裾野を伸ばした富士山が完全に見える河口湖は、富士北麓一帯の中では大人のリゾートの雰囲気で、人気のエリアになっている。富士山からほぼ真北に当たり、頂上からの日の出や日没も無い代わりに、常に斜光で陽光燦々とした富士山が迎えてくれる。

 河口湖と言えば逆さ富士、多くのホテルではそれが最大の売り物だ。ホテルによっては富士山が見えなければ、宿泊料金をお返ししますという触れ込みまで有る。実は河口湖は気流の分かれ道に在り、気温も太平洋側より数℃低いのも影響して、富士山が見えない確率がとても少ないのだ。

 冬の夜明の後は、湖面に波が立たないので逆さ富士が出来る。私は夜明前に河口湖に着く度に、この浜で光の移ろいを見ていた。それはいのちの輝く時、画面の左から太陽が昇り、鏡の水面に山越しの光が伸びて、気温の差で湖面に水蒸気が沸き立つ。その時間はとても短く、右の端まで水蒸気が出る事はまず無い。

 でも心に明確なイメージが有れば必ずそのシーンに逢える。毎回感性を研ぎ澄まして、ピンポイントの一瞬を求めてゆく。
今朝、美しい逆さ富士が映っている時に水蒸気が右端まで出た。私の立っている目の前まで湯気が沸き立っている。光がキラキラと水面を躍る。やがてモヤは消え湖にさざ波が立って、何事も無かった様に冬晴れの富士だけの光景になった。

 この写真は今から8年も前の光景である。今では水蒸気が左半分まで来ない。劇的な一瞬ではないが、光の演出の美しさが胸に残っている。

 今年7月、洞爺湖サミットが開催される。各国首脳と外国記者に限定で配布される日本紹介誌「The National Park of Japn」が先ほど完成した。その巻頭を「湖映雪姿」が飾る。

蒼き山嶺

墨絵の様なグラデーション

  9月中旬 午前8時半 丸山林道

 雲海は陽が昇るに連れ薄いモヤとなり、そのモヤもカスミとなって徐々に引いて行った。蒼い空と山並みが連なるだけのシンプルな光景だが、蒼から白へ、白から蒼へのグラデーションの美に吸い込まれる。濃淡の有る前景の山々が中景を引き立てている。

 何かに似ている。そうだ!。青い墨絵の世界だ。空一面の雲が色を受けて光り輝く様な富士山も大好きだが、垣間見せる一瞬の移ろいの表情も捨て難い。部屋に掛けるには後者の方がしっくり来るかも知れない。

 夜明前から立ちっぱなしで、太陽の動きと共に変わって行く富士山の表情を視ていると、こんなシーンになった時に初めて何時間も過ぎていた事に気付く。いつもはこの辺りで切り上げて少し仮眠した後、昼までに東京に帰る。

 しかし良いシーンに出逢った朝は心地よく、空振りだった朝はもう一日山に居ようかと空に訊いて、雲の変化が続くは夕景の時間までゆったりと過ごしたりと、楽しくも長い一日が過ぎて行くのである。

瑞樹輝き(みずきかがやき)

プリマドンナ フジと競演

  5月 午前6時 朝霧高原 東京農大農場

 いつの季節も早朝は清々しい。凛とした空気を富士山をテーマに、どう表現するかを考える時間は至福の時である。これまでに五感で受け止めて来た数々のシーンが頭をよぎる。同じ朝はない事が分っているから、出かける時は第六感に任せて未知のシーンに逢えるときめきに満たされる。

「そうだ、朝日を受けた水玉と朝露に濡れる草原で絵作りをしてみよう。」

 瑞々しい時期は?
    どの草原で?
       太陽は何時頃昇る?
          その時に山肌はどんな色で?
               天気はいつ変わるか?
                  その雨は夜中に上がるか?

 そして時には雲の演出する姿まで心に描き切ってピンポイントの地点に立つ。毎日、少しずつ角度を変える太陽の位置を読んで。

 朝霧高原には沢山の牧場が点在し、夜明けを迎えるには絶好の場所が無数に在る。農場の樹は富士山と競演するプリマドンナ。幹の周りには宿り木だろうか。逆光を受けて一番輝く瞬間を待っている。

 雲は刻々と湧いて流れてゆく。爽快な風が渡る。富士の頂きは雲に溶けかかり、もう天空で異次元に行っちゃってる様だ。宿り木の葉と水滴が輝いた。光はどでかいハレーションとなって入り込んだ。

 今だ!。全ての命がカンタータを歌っている。

 今朝も富士山に感謝無限大。