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 ↑ロッキー田中のエッセイ「ときめきの富士を求めて」はこちらから
ご覧いただけます。

黄金の雲

慶雲出現

  8月28日午前6時 安倍林道

 夜明けの瞬間に、太陽と富士山と私が一直線になる高い山にいること、
それは一番強い光が空全体にクリアな色をつけるから。毎日刻々と変って
ゆくその場所に立つ事をいつも考えている。

  太陽はあと3日後に富士山の頂上から出る。光はほぼ一直線だ。峠で夜明けを迎えた。夜明け前、灰色の雲がまとわりついて富士山は見えなかった。灰色と黒の汚れた雲が動いたのは、日昇による温度変化の風を受けた時だった。

  光が膨張した。もうすぐ朝日が富士山の肩越しに顔を出す。勝負の時が
来た。雲よ整え!。一番いい形になって富士の頭を見せよ!。願いつつそ
の瞬間を待っていた。少しづつ雲は頭の左右に広がり、更に上空に移動し
て繋がった。その時遂に金色に輝いた。

  慶雲と言われる黄金の雲が富士の峰全体を覆う事は滅多に無い。
  私は今朝その情景の中に立つ事が出来た。強烈極まる逆光の中で、冷静にフレーミングを整えていた。輝きが最高潮に達した金の光と、光を受け
て輝く雲と、遙かな富士山と、中景の微かな霧と、手前の黒い山まで全部
写し込め!。

  富士山からずっと遠いからこそ広角レンズを使う、それこそロッキー富
士だ!。自然の摂理に感謝しながら撮って撮って撮りまくった。その中で、
頂上に神様が降り立ったた一瞬がこの写真である。

  情景は夜明けである。
  しかし、

  <山麓から遥かな富士山の色変わりを見上げている思い>が有る。
夢に向かって行くぞ!。挫けないぞ!。その思いに「大丈夫だよ!」と山
が応えてくれた。いつも私に勇気を与えてくれる黄金の雲である。

黄金の海

金のマグマ

12月10日午前6時半 甘利山
 

 夜中にこの山に立ち、陽が昇るまで立っていた。季節に限らず夜明直前はかなり凍えるが足踏みをして 息を吸い込んで、その息が体中を廻って、足の指のつま先から息を吐き出すイメージ を繰り返す。

 しばらくそれを続けると体が暖まってくる。富士山は生きている。生きているから雲を呼ぶ。雲を呼ぶからシーンが変る。それ を求めて私は会いに行く。夜中の雲の動きは目が離せない。天気の変り目は特にそうだ。

 今朝は太陽が出る真際にやっと富士の姿が見えた。それまで富士は姿を見せず、 雲は刻々と流れていた。情景はその目を持つ者の前に出る。感じる事が出来なかった人は情景の囁きを逃す。 雲海が黄金の海になったのは数秒だった。

 マグマが沸き出して「動け、もっと動け!」 と私に言っている。クライマックス一瞬、シーンは私のフィルムに焼き付いた。 このあと富士は姿を隠した。正に一期一会の黄金の富士山である。

黄金の夜明

秋の至宝

10月19日 午前5時15分 丸山林道
 

  秋の晴天が続くと空気が汚れてくる。これを利用できないか.......。考えていた事があっ た。昨夜この林道に待機した。先週来た時に落葉松の色づきが早いと思ったからだ。平 地の気温は12度、しかし秋盛りとはいえ、標高1,800mのここまで登ると朝は零度にまで 下がる。そして必ず富士が見える。

  予感が当った。今朝、落葉松が最高潮に燃え、平地から見えた汚れたモヤ雲の帯が、 朝日を受けて金の帯となり、神山を天空に浮かび上がらせたのだ。谷間全てがゴールド に染まる中、影になっていた手前の森に光が入った。

  光が山間に満ち溢れたのは約1分間、木々の頭に光が来たのは30秒ほどだった。空も 谷も落葉松もそして富士も全ての色が最高に整ったのは数秒ではなかったか?。何年も 待っていた一瞬が来た。撮っている最中から、全ての色の出方がイメージできた 。

  空も山も落葉松も全てがゴールドになりエルドラド(黄金境)が出現した。出会いであ る。移ろい行く時の流れの中で、富士山が私にだけ姿を見せてくれた至上の姿であった。

紅明り

光の膨張

 2月下旬午前6時半 精進湖
 
  鏡の湖を知っていますか?。
  富士山から北西の樹海の外れに有る一番小さな湖を。
  指先も凍えるような冬の朝、その前に立つと見せてくれます。
 
  それは夜、その夜が終りつつ、
  夜明けを迎えに行く瞬きの時間に湖は漣を止めて鏡になります。
  まるで、これから始まる夜明けのドラマを息を詰めて見守る様に。
 
  夜明け前、その瞬間は一日で一番寒い刻。
  寒い程、凍える程に色は紅くなります。そして朝の光が膨張します。
  その時、ふわっと雲が湧いて、湖に影を映しました。
 
  富士山はシルエット、でも良く見ると写っています。
  嶺の微かな白雪も、手前の小さな山までも。

虹の翼

翔雲鳳来

11月17日午後2時42分 山中湖村梨ケ原
  

  朝から雲が湧いては走っていた。その雲が固まって富士山の上で渦を巻き始めた 時、私は太陽と頂きと自分が一直線になる強烈な逆光の場所にいた。その場所し かないと決めた。

  山中湖村の梨ヶ原に着いたのは2時38分だった。間にあった。太陽はこの時間帯 に梨ケ原で頂上に来る。

  雲が渦を巻いている。笠雲が動き出した時、確かに声が聞こえた。「おーい、今 姿をみせるぞー!」。無意識に構図が決まり、眩い直射光の中でその姿が完全に 見えて、対峙しながら撮り入れた。雲がゆっくり形を変えている。 翼を広げて鳥 が嶺をおおった。長い首が出た。クチバシに金の光が射した。翼に彩雲が来た。 その光が最高潮に達し虹色になった。

  白鳥だろうか、いや鳳凰だ。メッセージを持って天空に出現した。 この写真の前に立ったまま動かず涙を流してくれた人もいた。私は動かされて見えないものを撮っている気がしている。技術を超えて、時として心のイメージさ えも超えて。その日その瞬間、私だけに出てきてくれたということがある。天恵 だと思えわずにはおれない。

  目に見えた世界のその向こうにあるもの、それが「ときめきの富士」である。時 としてそれはメッセージであり想像を超えた神秘の世界の出現である。

ブリリアント

希望燦然

11月17日午後2時44分 山中湖村梨ヶ原
 


  笠雲は虹の翼から形を変えて太陽はほぼ頂上に近づいていた。雲はまだ形を少し ずつ変化させている。2時44分、完全に頂上に来た。太陽をレンズの真芯に入れ ればゴーストは防げるが、それでは画面の中央に太陽が来て絵にならない。 太陽の位置を上にズラし、出来る限り富士山を裾野一杯入れて、ゴーストが出な い角度を探す。太陽の動きに合わせながら撮った、撮った、撮り捲った。

  完全逆光で、富士の頂上の雪もギリギリ描写したい。雲の端に彩雲よ出よ!。し かも笠雲の上に燦然と輝く太陽と共に。そして数カットが満足のゆく写真になっ た。それがこの「ブリリアント」である。太陽は真芯に来て雲の端に彩雲が出た。 「大丈夫!夢はきっと叶うよ!。富士山が励ましてくれる。 輝く日輪網笠富士だ。よく見ると「日本一」と読める。